第6回子どもの貧困対策検討会議(愛知県)を傍聴

第6回子どもの貧困対策検討会議(愛知県)を傍聴してきました。

昨日、湯浅誠さんがFacebookに以下の投稿をされていました。

愛知県の子ども調査結果が出る。
http://www.pref.aichi.jp/…/chii…/28kodomochousa-syuukei.html
県内3万世帯以上に調査して、子どもの貧困率は5.9%と低く出た。
対してひとり親家庭の子どもの貧困率は52.9%と、全国並みに高い。
検討会議で数値の検証はなされるだろうが、この通りなら、対処すべき施策の方向性ははっきりするだろう。
調査することのメリット。

 

そこで、標記会議を一般傍聴してきました。
委員の方々の指摘が鋭く、中でも日本福祉大の末盛准教授、中村准教授による「愛知県のひとり親世帯の暮らしはかなり厳しく、格差が大きい。」という指摘には、新たな視座が与えられたようで、感銘を受けました。

以下、検討会議の全内容です。
(正確さはあまり保証できませんが、できるだけ詳細に聞き書きしました。)

来年の今頃には政策提言などがなされるようです。
NPOとしてどこをどのように担っていけるか、私も考えたいと思います。

愛知県第6回子どもの貧困対策検討会議

2017/03/23 愛知県本庁舎6階正庁 一般傍聴

検討会議メンバー

折出健二 人間環境大学特任教授
後藤澄江 日本福祉大学教授
末盛慶  日本福祉大学准教授
中村強士 日本福祉大学准教授
原田明美 名古屋短期大学准教授
望月彰  愛知県立大学教授

 

健康福祉部長 長谷川

本日は今年度最後の会議です。
今回の調査に際しては多くの方にヒアリングをしていただき、休日夜間問わずご協力いただいております。
これまでにない大掛かりな調査。
これから子どもの貧困対策を進める上でたへん貴重なデータが得られていると思います。
保護者には50問にも及ぶ設問にご回答いただきました。

 

後藤座長

調査担当の三菱UFJリサーチコンサルティングよりご報告いただきます。

 

三菱UFJリサーチコンサルティング

調査を担当させていただきました。
【愛知子ども調査(概要版)】

回収率70.6%。
国の貧困線(122万以下)と愛知県独自の貧困線(137.5万以下)を算出。

  • スライド16 子ども自身 大学まで行きたいと思うのは小5で40%、中2で48%。
  • スライド22 食料が買えなかった経験があるのは9-10%

 

折出

些細だが気になった点。私は子どもの人間関係・関係性について注目してみている。

スライド11(資料1 p6)

「絵本の読み聞かせは約70-71%にとどまる」の「とどまる」というところに評価が入り込んでいるようにみえる。これはまずい。

 

望月

分析する際にどこに着目するか?単に我々は客観的に「これは何%であった」というだけではなく、我々が見る際にはそのデータをもとにしっかり論ずることが必要であると思う。

スライド16(資料1 p8)

昔聞いたことがあるのは、高校の定員を95%程度の定員しか設定しないで競争を促すような政策をとったことがあると聞いたことがあるが、いまでもあるのだろうか?と思う。(中卒の母親が5%程度いることに鑑み)

貧困はよく椅子取りゲームに例えられるが、最終的には野宿に至ると。

様々なデータをクロスさせてみていくと、見えてくるものがあると思われる。

 

後藤座長

スライド16(資料1 p8)

子どもに期待する学歴の書き方について、もう少し整理して表記できればと思う。

 

児童家庭課

資料3 ひとり親家庭等実態調査について(概要)(説明)

資料4 ひとり親家庭等実態調査について(報告書(案・校正中))(説明)

「母子世帯」には、父母や兄弟姉妹、祖父母、配偶者の父母等と同居している世帯も含んでいる。この点は概要版(資料3)からは読み切れないため、ご説明申し上げておく。

*問49 期待する県や市町村の施策の1位は43.6%で「お子さんの学費、通学交通費などの就学援助」

 

原田

資料4 p1 「調査対象」愛知県内の母子・父子世帯全体の概ね1割程度、とあるが、調査票配布数は母子2680人、父子2653人なのは、父子の1割が2653人という意味なのか?割合としては一般的に母子のほうが大変多いものと認識していたが。

 

児童家庭課

愛知県にはおおよそ、全体65,000人、母子55,000人、父子10,000人くらいがいる。その全体の1割という意味。

調査票配布数が母子と父子がほぼ同数なのは、父子の総数が少ないことから、標本のばらつきを抑えるため、また父子のほうが回答率が悪いだろうと考えて。

 

後藤座長

今回のデータでは父子の割合からすると、データにおいては父子の割合が多いので、それがあるいはデータの数字(世帯収入など)を押し上げている可能性もあるので、その点を踏まえてみていかなければならない。

 

折出

問30 p44

「大変苦しい」という回答に対する記述を入れなかったのはなぜか?(なぜ「やや苦しい」という点のみを指摘したのか?)

 

後藤座長

そのあたりの書き方も検討する必要がある。

 

末盛

「平均年収」とあるが、「中央値」も併記した方がいいのではないか。

P44 問30①のグラフは、「子の年齢別」の棒グラフにして、その内訳を大変苦しいなどと示したほうがいいのでは。

 

子どもの健康状態が全国に比べていい。全国に比べて10ポイントほどいい。経済状態と比例している点は、世界的なあらゆる調査でも同様の傾向が見られる。

一方、ひとり親が厳しい。都市地域でこの貧困率は厳しい。
例えば、農村地域では野菜の交換などが行われることがあるのに対して。

母子世帯から「生活が苦しい」という回答が70%と出ている点を踏まえてみても、大雑把ながら、「ひとり親がかなり苦しい」ということが今回の調査結果から知見として得られると思う。

 

今回の回収率7割というのはよく集まっている。しかし3割は返ってきていない。

さらに、母子世帯は3割、父子世帯は1割程度しか回答が返ってきていない。

これはかなり大きいのでは。

今回の結果をそのまま真に受けず、実態はこの数字より厳しいものであると認識しておいたほうがいいと思う。

比較的余裕のある人が回答をしているとも考えられるので。

 

中村

子どもの貧困率の数字、5.9%、9.0%。山形県の教授がなさった全国都道府県別の貧困率の結果から見ても妥当な数字かなと思う。

一方、私の関わる沖縄県は子どもの貧困率30%以上。沖縄県としては今後、高校、さらに乳幼児の調査をしたいと考えている。愛知県もそれを参考にしたい。

ひとり親家庭の子どもと、それ以外の子どもの格差が、愛知県は全国に比べて多いということが言えると思う。その格差に注目したい。

今回は名古屋市も含めた調査であるので、今後比較検討する際に、その点(名古屋市を含むか否か)はよく考慮する必要がある。

 

後藤座長

報告書としては、このような形で進めさせていただきたいと思います。

 

三菱UFJリサーチコンサルティング

現在、「関係者聞き取り調査」を進めている。

折出

私は養護教諭の聞き取りを担当している。

来室する子の家庭はひとり親が多いと言う話が聞こえている。

もやもやして壁に手を打ち付けるということ、「死にたい」、親から「あんたなんかいらない」と言われた、拒食などが見られる。

次年度、どのように分析して活かしていくかが重要。

 

後藤座長

困難のある当事者の声を色々聞いて、しっかり分析すると同時に、支援者の後押しになるような報告書になることも必要。

 

望月

今後、どのデータをクロス集計させていくかが重要。また自由記述の集計もまだなのでそれは膨大で大変かと思うが、今後どういう方向で進めていくのか、お聞きしたい。

 

事務局 地域課長

追ってお知らせします。

 

末盛

分析の方向性としては、個人的には、クロス集計は進めていただきつつ、委員の中で独自に分析したい方にはデータをお渡しして、その両方を合わせていけばいいのではと考える。

 

中村

独自に委員が分析することは可能なのか?

UFJと長い時間を共有しなければならないとも思うが。

 

事務局 地域課長

相談した上でご回答申し上げます。

 

望月

ソースデータ(元データ)をどこまで公開するか、という問題はある。

本検討会議委員6名に公開することはもとより、さらに全国に向けて公開にしてガラス張りにしたうえで議論し、多くの意見をいただければいいのではないかと思う。

 

後藤座長

事務局と三菱UFJリサーチコンサルティングと私で調整させていただきたい。

 

折出

座長に確認したいが、来年は分析で終わるのか?着地点は。

 

後藤座長

政策提言まで、どういう形になるかわからないが、秋頃にかけて、政策提言などのような形まで、来年3月ころに向けてまとめていければと私は考えている。

 

折出

回答してくれた方に対して、応える責任があると私は思う。

意見を述べるだけでなく。

 

後藤座長

何らかの形で印刷物にさせていただくということにして、時期については事務局と相談してまいりたい。

 

以上

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