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日系カナダ人強制収容75周年を迎えた今年。
3月末には、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館が日系カナダ人の重要な史跡としてブリティッシュ・コロンビア州史跡登記に登録されました。
そんな、バンクーバー日本語学校とそこに併設される保育所「こどものくに」を訪問してきました。
バンクーバー日本語学校
バンクーバー日本語学校は、以下のクラスを設けています。
- キンダークラス
- 小学科・中学科・高等科
- 基礎科
- 高校生・社会人クラス
学校であるということ
この学校は「学校である」ということを意識しているそうです。
授業は毎週土曜日の週1回のみです。
しかし、日本語学校の役割を、日本語の技能を伸ばすことにとどまらず、「日本語教育を通して人格形成を行い、コミュニティに貢献する人材の育成に寄与する」と定義しておられます。
それゆえに、「学校である」ことをあえて全面に押し出しています。
「日本語が好き」を大切にする
ところが3,4年生のクラスになると、だんだん子どもたちは、日本語という継承語(社会生活で通常使う言葉(=英語)以外の親世代から継がれる言語)の学習が「オプション」(必須ではない)ことに気付くそうです。
すると、「土曜日は友だちのバースデーパーティーがあるのに」「サッカーの試合に行きたいよ」と言って日本語学校に来たがらなくなるようです。
これは、在日フィリピン人やブラジル人の子どもたちと同じですね。
しかし、先生方は「学校が好き、日本が好き」と思ってもらえるように日夜工夫を重ねておられるとのことです。
この学校で一番大切にしていること。
それは、「日本語を好きでいつづけることです。」
校長先生がその考え方をおっしゃった時、とても嬉しく思いました。というよりも、ほっとした、という方が近いかもしれません。
日本で外国人の子どもたちに日本語教育をしていた時、
「その子の将来のためだから」と、詰め込みにも似たような教育を保護者や就学先の学校等に暗に求められているように感じてきたからです。
しかし、本当にその子の「将来」を考えるなら、日本語の技能ではなく、まず「好きになること」が大切だ――。
この気持ちを(おこがましいながらも)共有させていただけて、今まで自分が大切にしたいと思ってきたことが肯定されたようで、心底ほっとしました。
なお、この学校では落第(留年)も極力させないようにしているとのことです。
日本を、日本語を好きでいつづけるためには友だち関係が最も重要。ですから、その関係を断ってしまうことはしないように努めているそうです。
教科書は光村図書を一歩ずつ
教科書は日本の学校の6割が選定していると言われる光村図書の国語の教科書を用いています。
ただし、1年間かけて上巻を、もう1年かけて下巻を終えるため、小学6年生までに日本の小学3年生の教科書を終えるペースで教えています。
指導に市販の問題集を用いることを校長先生は奨励していません。
日本の社会生活を送る日本の子どもとカナダの子どもとでは知識や語彙等のベースが異なるため、日本の子ども向けに作られた問題集をそのまま使わせるのはふさわしくないと考えたためだそうです。
「差別がなくなってきた」
日系の子どもたちのアイデンティティについて尋ねてみました。
「カナダ人になりたい」と言いませんか、と。
日本にいるフィリピン人の子どもたちは、クラスメイトから「ガイジンガイジン」といじめられたときに、
よく「日本人になりたい」と言います。
校長先生がこの仕事を始められた40年前は、子どもたちに尋ねると「I’m Canadian.」と答えたそうです。日本人(日系)であることはイジメのきっかけになったり、恥ずかしいことだったりしたからです。
しかし、今はほとんどの子どもは「I’m Japanese-Canadian.」と答えるそうです。
バンクーバーの街を歩いていても感じることですが、いまは人種が実に多様です。日系(アジア系)であるということは特に珍しいことでもありません。
そして先生は、こうおっしゃいました。
「みんながちがうので、差別がなくなってきました。」
よく「いじめや差別はなくることがない」と言われます。確かにその通りでしょう。
しかし、それを限りなくゼロに近づける(あるいは無効化する)方法があるとすれば、それは「社会を多様化させること」かもしれません。
「こどものくに」(保育所・日本語環境幼稚園@バンクーバー)
この保育所は、数年前に政府認可を得たとのことです。
築年数の100年近い日系人会館の中にあって、非常に綺麗にリノベーションされています。
クラスは以下のとおり設けられています。
- デイケア(英語環境:3-5歳児)
- トドラー(日本語環境:2歳児)
- 日本語環境幼稚園(3・4歳児)
以下、詳しい説明はWebサイトから引用させていただきます。
「こどものくに」は、カナダ・バンクーバー市の旧日本人街に位置する保育園と日本語環境幼稚園です。
運営団体のバンクーバー日本語学校並びに日系人会館は、1906年から日本語や日本文化プログラムをコミュニティに提供しています。
滑り台、砂場などの遊具を備え安心して遊べる園庭、雨季が長いバンクーバーでも元気に走り回れる400平米の多目的ホールなど、充実した施設があります。万が一の場合に備えてAED、非常食などの災害備蓄品、自動火災通報装置やスプリンクラー設備も設置しています。
すべての保育士はBC州の保育資格とファーストエイドの資格を持っています。
また、日本語環境幼稚園の保育士は日本の保育資格や経験もあります。
「こどものくに」は、BC州の定めた施設、床面積、保育士の数、衛生管理などの厳しい設置基準を満たした認可保育園・認可幼稚園となっています。
保育部門を除き、BC州の法律により認可幼稚園での保育時間は一日4時間以下と定められておりますのでご了承下さい。
参照:
http://vjls-jh.com/childrens-world/childrens-world/ja/
今日は2歳児さんのクラスにお邪魔しました。
日本語が強い子が2人、英語が強い子が6人、といったところでした。
2歳の英語を話す女の子と話していた時、
2歳 「Spangles.」
ぼく 「スパンコール?」
2歳 「No. Spangles.」
ぼく 「スパンゴース?」
2歳 「No. Spangles.」
ぼく 「スパ・・・」
恥ずかしかったです(笑)。
2歳の子に英語のレッスンをしてもらえて良かったのですが、
自分の発音の下手さにがっかりでした。
先生はお2人いらっしゃいましたが、とても気さくに話しかけてきて下さって、居心地のよい保育室でした。
雰囲気は一言で言うと日本の保育園に近いものです。
しかし、カナダでは手に入らないもの(例えばタオルハンガー)はDIYで何とかするなど、あちこちに工夫が凝らされていました。
まとめ
バンクーバー日本語学校並びに日系人会館には、主な取り組みとして、
「日本語学校」と「こどものくに」があります。
そして、それぞれの取り組みには長い経験と高いプロフェッショナリティに基づく丁寧な努力が今も日々積み重ねられていました。
今後外国人(移民)が増えると見込まれる日本の社会が、この施設から学ぶべき点は少なくないと思います。