住居確保支援 〈2015年バンクーバー訪問時の記録⑥〉

フォーシスターズ協同組合(Four Sisters Co-operative)

フォーシスターズ協同組合(Four Sisters Co-operative)という団体が運営するアパートがダウンタウン・イーストサイドにいくつかあり、訪問しました。

その内の一つには、案内をしてくださったローレル司祭も住んでおられます。

 

アパートの敷地の玄関には、住民が安心して暮らせるよう鍵がかけられています。

 

 

玄関から敷地に入ると、緑が広がっています。

木屑を敷いた遊具スペースがあり、屋上には共用バーベキュースペースもあります。

人の交流が盛んに行われるような工夫がなされていました。

 

このアパートには全部で153の部屋があり、とくに独居の中国系移民が多く暮らしているそうです。

かつては子どものいる家庭も多く、1階には保育室も設けられていましたが、今は使われていないとのこと。

代わりに、パーティースペースとして用いられているようです。

簡単なトレーニングができるジムもあるなど、少しずつ形を変えながら、住民の暮らしやすさに気を配っていることがうかがえました。

 

古い建物を改築し、さらに2棟を1つに繋げて使っています。

内装は綺麗に手が施されていました。

バンクーバーでは地震の心配があまり無いため、古い建物でも改修しながら使うことができるそうです。ただし、火事にはかなり気をつけているようでした。

 

ダウンタウン・イーストサイドは、極度の困窮状態になくても、住まいを失いやすい状況にあります。地価が高騰し、アパートを借りるので1000ドル近くするようになってしまっています。

 

それゆえ、かなりの収入がない限り常時アパートを借り続けることができず、住まいを安定して確保することができません。それが大きな社会問題となっているようでした。

 

ダウンタウンイーストサイドのコミュニティ・ハウス

ダウンタウン・イーストサイドに建つ古い一軒家が、改修されつつ、コミュニティ・ハウスとして使われていました。

今は2家族と他に数人が同居しているようでした。

 

ここも、やはり賃借料高騰を背景に住まいを確保できない人のための施設です。

裏手には野菜畑があり、いま手入れを始めているところ、とのことでした。

もともとは独居のおばあさんが暮らしていたが、一人には広すぎるその家を、交渉の末に買い取って、このプロジェクトのために用いているそうです。

 

 

バンクーバーの中心街であるガスタウンには、ファッションギャラリーやコーヒーショップが乱立しており、近所であるこの建物も、何度となく売却の話が持ち込まれたそうです。

しかし、住まいのない人にとっての貴重なスペースであるこの家を売り払う気は毛頭ない、と管理者の方は話しておられました。

 

その方は、

「ガスタウンには1000ドルもするベビーカーを売っている店もある。1000ドルだぜ。そんなに払うくらいなら、赤ちゃんは手でだっこしてやればいいじゃないか」

と話していました。

 

また、

「子どもの演劇発表会なんかに行っても、今じゃみんなiPadで写真や動画を撮りながら、画面越しに子どもを見ている。でも、直に見てやらなきゃ見えないものもあるだろう。“i”じゃなくて“eye”で見なきゃ」

とも言っておられました。

 

彼の話をうかがっていると、こうしたコミュニティ・ハウスは、経済至上主義が台頭する中で、その価値観に抗う砦としての役割を、目に見える形でも、目に見えない形でも果たしているように感じました。

 

 

全6回にわたってご紹介した、2015年度バンクーバー訪問時の記録はこれで終わりです。

お読み下さり、ありがとうございました。

 

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