LGBT、男・女らしさの押しつけ、貧困、薬物依存症保護者による児童虐待、人種差別、いじめ。
テーマがあまりに重く、また時宜に適いすぎている。
そして、監督バリー・ジェンキンスはほぼ無名の新人、制作費たった6億円、撮影期間25日 ―。
それでも、あの『ラ・ラ・ランド』を抑え、アカデミー賞とゴールデングローブ賞の両作品賞を受賞した本作。
マイアミの貧困地域で、薬物依存症の母親に育てられた主人公シャーロンの物語。
ゲイであること、ネグレクトされていたこと、貧しいこと。それは背負うべき十字架であり恥ずべきスティグマなのか?
マイノリティであり何重もの苦しみの中で生きる人を美化した映画だという批判もあるかもしれない。
観たあとに心地よさが残る映画ではないかもしれない。
だが、これがアメリカで、あるいは世界で最高の評価を受けているということが、この映画に別の意味を与えているように思えた。
社会の中にある問題は、
自己責任で片付けられるほど簡単なものではなく、
タブー化して済む話でもなく、
むしろ広く話題にして多くの人の知恵を用いて解決策を編み出すべきものなのだということが、
世界の常識になっていることを示しているように感じる。
とくに貧困や差別の社会課題の解決に関わる人にとっては、観ておくべき映画、と言えるかもしれない。
そして、貧困や差別という課題の解決に関わりなく生きている人は、この社会には一人もいないはずである。
誰もが加害者となり、被害者となり得るから。
HuluやAmazonプライム・ビデオなどでは2017年7月下旬現在まだ公開されていないが、比較的すぐに公開されると思われるので、一度以下から調べてみていただければと思う。