Contents
- 1 はじめに〜 外国人の受入れ・共生ため教育推進検討チーム 報告(浮島とも子/文部科学副大臣)
- 2 文科省検討チームによる外国人の子どもの教育支援について(三好圭/文部科学省)
- 2.1 公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数の推移
- 2.2 帰国・外人児童生徒に対する日本語指導の現状①
- 2.3 帰国・外人児童生徒に対する日本語指導の現状②
- 2.4 義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律
- 2.5 遠隔教育システム導入実証研究事業
- 2.6 日本語指導アドバイザリーボード設置
- 2.7 発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援事業
- 2.8 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査/高校生等の中退・進路状況に関する調査結果
- 2.9 外国人高校生等に対する包括支援環境整備事業
- 2.10 高等学校における受入れ
- 2.11 外国人の子供の就学状況等調査
- 2.12 夜間中学に関する各種会議決定①
- 2.13 夜間中学に関する各種会議決定②
- 2.14 新しい時代の初等中等教育の在り方
- 2.15 外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議
- 3 大阪府立高校の「枠校」の取り組みから見えてきた成果と課題(森山玲子/大阪府立長吉高等学校教員)
- 4 全国の高校進学格差と特別枠ナショナルミニマム設定のために(鍛治致/大阪成蹊大学マネジメント学部准教授)
- 5 外国につながる子どもたちの大学進学(樋口直人/徳島大学総合科学部准教授)
- 6 当事者の声
- 7 パネルディスカッション
2019年7月5日(金)、シンポジウム『外国につながる子どもたちの進路保障―小中学校の支援を経て高校、大学へ』(主催:上智大学グローバル・コンサーン研究所)が開催されました。
なお、このシンポジウムの発表資料はGoogle Driveで公開されており、お好みの資料をダウンロードすることが可能です。
報告資料:
https://drive.google.com/drive/folders/1mWP9nhSvlNovxc17kd_BQwElmoGiW_wI
関連論文・政府資料など(参考):
https://drive.google.com/drive/folders/1dwEhnlXrjL6-97c2YrWDSOdA5rHsubn_
以下、シンポジウムの内容をまとめた記録です。
はじめに〜 外国人の受入れ・共生ため教育推進検討チーム 報告(浮島とも子/文部科学副大臣)
今年1月、浮島・文科副大臣を座長とする「外国人の受入れ・共生ため教育推進検討チーム」が発足、8回の検討会議を重ねてきた。
そして、6月17日に報告書を取りまとめた。(下記リンク参照)
外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム報告(骨子)~日本人と外国人が共に生きる社会に向けたアクション~ (PDF:626KB)
外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム報告~日本人と外国人が共に生きる社会に向けたアクション~ (PDF:604KB)
大きな3つの柱がある。
- 外国人児童生徒等への教育の充実
- 外国人に対する日本語教育の充実
- 留学生の国内就職促進・在籍管理の徹底
その中のひとつ、「1.外国人児童生徒等への教育の充実」には、さらに7つの柱がある。
学校におけるきめ細かな指導体制の更なる充実
①学校における教員・支援員等の充実
・多言語化への対応(多言語翻訳システムの活用、遠隔教育の充実)
②教員の資質能力向上
・指導者派遣の仕組みを構築し、全国的な研修機会を確保
③進学・キャリア支援の充実
・高校生に加えて、中学生の支援を充実
・高校入試における外国人生徒への特別な配慮を促進
④障害のある外国人の子供への支援
・特別支援学校等においても、日本語指導補助者や母語支援員等を配置
・特別支援教育と外国人児童生徒指導の双方を学ぶ教員研修の機会を充実
地域との連携・協働を通じた教育機会の確保と共生
⑤外国人の子供の就学状況の把握及び就学促進
・就学状況の全国調査を実施し、就学促進に向けた支援を充実
・多言語での就学案内を徹底、外国人のための就園ガイド(仮称)を作成
⑥夜間中学の設置促進等・教育活動の充実
・全ての都道府県・政令市に少なくとも一校が設置されるよう促進
・日本語指導等を含む教育活動の充実
⑦異文化理解や多文化共生の考え方に基づく教育の充実
・母語・母文化を尊重しつつ、日本語・日本文化への理解を促進
外国人児童生徒の教育は、質・量ともに向上。
研修により教員の資質向上を図ることとしている。
さらに、異文化理解・多文化共生や、障害のある外国人の子どもを含むこの支援をしっかりと進めていく。
言葉や文化の壁があって、進学が難しいという現場の声がある。
キャリア支援に取り組む。
また高校入試における外国人への特別な配慮。
子どもの就学案内の多言語化。
今年、初めて全国の不就学実態調査を実施している。
外国人生徒比率の高い夜間中学の全都道府県1校以上の設置を進める。
文科省検討チームによる外国人の子どもの教育支援について(三好圭/文部科学省)
三好さんは厚労省からの出向。昨年夏から。
総合教育政策局の外国人児童生徒担当に。
局としても自分としても新しいチャレンジ。
「俯瞰図にいろいろ書いてくれたね」と言われることもあるが、よくわからないまま進めてきたようなところもある。笑
以下、スライドを参照しながら進める。
「外国人の受入れ・共生のための教育推進検討チーム」報告(外国人児童生徒等教育関係)
公立学校における日本語指導が必要な児童生徒数の推移
日本語指導が必要な児童生徒数。
もうすぐ最新データが公表できるよう準備を進めている。
帰国・外人児童生徒に対する日本語指導の現状①
集住と散在の(二極化の)傾向。
愛知県知立市の東小は8割の新入生が外国人、そんな学校に訪問もした。
集住と散在の両方の対策が必要と考えている。
帰国・外人児童生徒に対する日本語指導の現状②
「特別な指導」=取り出し
しかし全員が保証されているわけではない。
それがなるべく多くなるように。
義務教育諸学校等の体制の充実及び運営の改善を図るための公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律等の一部を改正する法律
教員の配置→義務標準法の改正
そのサポートが期待されているのが、日本語指導支援員や母語支援員。
その人件費の補助をし、去年よりほぼ倍増。しかしまだ足りないとの指摘も。
多言語化の課題については、ICTを使って解決を目指す。
遠隔教育システム導入実証研究事業
遠隔教育システム導入研究
日本語指導アドバイザリーボード設置
中央からのアドバイザー派遣
今月から始まり、これから大々的に宣伝していく。
発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援事業
障害のある外国の子の支援。
発達障害の子への合理的配慮。
日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査/高校生等の中退・進路状況に関する調査結果
日本語指導が必要な高校生の中退率は9.6%。
3年間にすると3割が中退してしまう計算。
外国人高校生等に対する包括支援環境整備事業
地域包括支援 放課後居場所づくりなども含む。
高等学校における受入れ
各県の取り組みに関する知見を集積したい。
外国人の子供の就学状況等調査
就学実態調査。新聞でも取り上げられたが。
浮島副大臣が国会で「やります」と宣言したもの。
外国人学校に何人、どこにも行っていない子が何人か調査する。
データを集積して施策に活かしたい。
夜間中学に関する各種会議決定①
夜間中学の利用促進
夜間中学に関する各種会議決定②
異文化理解・多文化共生
新しい時代の初等中等教育の在り方
4本柱の1つが外国人児童生徒への教育。
ここまで大きく取り扱われるのは画期的。
外国人児童生徒等の教育の充実に関する有識者会議
大阪府立高校の「枠校」の取り組みから見えてきた成果と課題(森山玲子/大阪府立長吉高等学校教員)
大阪府立高校の「枠校」の取り組み
枠校=「日本語指導が必要な帰国生徒・外国人生徒入学者選抜」制度のある高校。
しんどい思いをしている生徒に向き合っている学校。
自ら手を挙げて枠校になった学校ばかり。
長吉高校の卒業生
- 「枠」(転入学・二次や秋入試での配慮生徒含む)卒業生215人
(卒業率:単位制85%、エンパワ96%)
- 「枠」に係わらず、日本語や母語等の支援を受けた卒業生 268人
(卒業率:単位制83%、エンパワ90%)
*ちなみに学校にはネイティブ・フィリピノ語というクラスがある。
長吉高校卒業生(ルーツ別)
長吉高校卒業生の進路先
フィリピンの子は特にお金の問題で私立大をやめるこが多かった。
しかし「全額免除」をしてくれる大学を見つけて入ると、そこはちゃんと卒業していった。
長吉高校外国ルーツ生 進路別
ルーツによる進路傾向
成果
- ひとりぼっちにならない
- 卒業後も、生徒同士が、日本社会の中で同じルーツ、またはルーツを超えてつながっている。
- 信頼できる日本人、日本社会とつながっている。
- ちがいを豊かさにできる社会へ
- 「枠」以外で入学したルーツをもつ生徒(“ハーフ”や日本生まれの生徒たち等)も共に活動
- 教員、日本人生徒や保護者の気付きや学び
課題
①「枠」の取り組みの継承と広がり
- 人材確保・育成
ネイティブ教員の採用/母語支援者の確保
校内コーディネーターの育成(管理職の理解)
- 大阪のフレームづくり
↑大阪府立学校在日外国人研究会
「枠」校間の連携
少数点在校との連携
NPO、大学等研究機関との連携
②高校における日本語教育の確立
- 日本語の専門家としての教員採用
- シラバス・教育法・教材の開発(漢字圏と非漢字圏)
- 法の壁 資料4)「家族滞在」生徒の悩み
例)・「家族滞在」:就労不可・日本学生支援機構利用不可
・不安定な親の滞在資格 → 帰国へ
全国の高校進学格差と特別枠ナショナルミニマム設定のために(鍛治致/大阪成蹊大学マネジメント学部准教授)
国籍別・都道府県別の高校在学率
兵庫県が高い在学率を示す一方で、岐阜県の在学率は多くの国籍において低く留まっている。
要因の詳細は不明だが、兵庫県が高いのは、オールドカマーのコリアンが集住傾向にあり、それが進学率を押し上げていると見ることはできるだろう。
全国の高校の進学格差——その要因
行政が社会的弱者に対する、特に子どもたちに対する支援の手厚さを示す。
入学特別枠—その効果の検証
移民世代別学校段階別在学率
大学(四大)進学率が高いのは、1.4世(小4〜小6来日)と2.0世(日本生まれ)。
ナショナルミニマム設定のために
最低限、高校卒業は保障してあげるべき。ルーツによらず。
その1つは、入学特別枠をつくること。
ただ、中身のある(入学する意義のある)「枠」をつくらなければならない。
外国につながる子どもたちの大学進学(樋口直人/徳島大学総合科学部准教授)
発表資料 『外国につながる子どもたちの大学進学』(樋口)
帰国生だけでなく、外国籍の生徒にも、就学だけでなく進学の格差是正を訴えたことは画期的。
親の学歴より子の学歴が低くなっている国籍:フィリピン、ペルー、ブラジル。
子どもの可能性を摘んでしまっている国と言わざるを得ない。
大学進学率は、自国に帰ったり来たりすること(移動)が少ない人のほうが高くなる。
入試の多様化をすることが1つの解決手段と言える。
当事者の声
ジョアンさん(長吉高校卒業生)
外国人の家族は問題を抱えている。たくさん。
文化の違いはもちろんだが、それで片付けるのは単純過ぎる。
情報を得る力が少ない。
親が大学出ていないとか、大学教育の必要性を親が分かっていないとか。
私の親も大学を出ていない。
さらに、交友関係の範囲が狭い。親が。
私の親もそうだが、働きに来ている。
工場で働くと、中卒の日本人と友だちになる。すると、高校や大学にどうやって進学するのか、塾に入れるか入れないか、そういった情報を得られるような交友関係はない。
自分でなんとかするか、「ヒーローな先生」に出会うか。それしかない。
私はヒーローに出会った。
校長先生。
接待室で、マンツーマンの日本語指導を校長自身がしてくれた。
ただ、ヒーローな先生に頼るのは、あまりに再現性がない。
全員がヒーローに出会えるわけではない。
仕組み化する必要がある。
もう一つ、金銭面。
私の実話として、定期券を買うお金がないから貸してくれということもあった。(先ほど登壇した森山先生に。笑)
会社に「給料下げる」と言われたら下げられるしか無い。
他に働くところもないから。
私は、他の友達をみると罪悪感を感じる。
なぜ私は大学まで出られて、他のみんなは行けなかったのか。
涙が出そうになる。
中学校の先生に相談して、長吉高校の枠で入ることにした。
入ってみると、非常に偏差値の低い学校だった。
(入学直後は)後悔しそうになったが、とても的確な支援を受けられ、入ってよかったとあとで思った。
母語支援を受けられたのもよかった。
そこでアイデンティティの確立ができたと思う。
大学に入る利点は、体系的な教育を受けられること、交友関係が広がること。
困ったことがあると今でも大学の友人に連絡して「助けて」と言える。
いま自分は外資系企業の現地(日本)法人の代表として、20人程度を雇用できるようになった。
そして、こうして日本社会に貢献することができている。
ヘナンさん(大阪大学大学院生)
私はヒーローに出会わなかった。
8歳で日本に来た。
(日本各地を引っ越しで)転々とし、高校で名古屋の高校に入った。
学校では自分ひとりが外国人。
まわりはみんな大学進学していたが、自分はお金がなかったのでできなかった。
ブラジルに帰ったが、日本の教育しか受けていなかったので、向こうの大学も入れず、日本にまた戻ってきた。
1年アルバイトして、
大学入って、
奨学金を得てアメリカにも行って、
それで英語、ポルトガル語、日本語を使えることを武器にして、商社に就職した。
でも、自分のような困った思いをしている子どもがいることに自分が気づいたなら、なんとかしたいと思って、大学院に入り直し、今に至る。
パネルディスカッション
樋口さん
- 文科省に質問。大学進学に関する意識は?
- 長吉高校の森山先生へ。どういう子どもが成功しやすいか?
三好さん
- 無かったと思う。初等中等教育局(高等教育にあたる大学は管轄外)だったこともあるが。
森山さん
- 非漢字圏は不利。
- 英語のできるフィリピンの子は有利と思われるが、進学したとしても続かず、ドロップ・アウトしがち。
三好さん
- 鍛治さんの話で、早く来たら大学進学率が高いわけでもなく、日本生まれの子(2.0世)と同時に小4〜6あたりで来た子(1.4世)の進学率も高いと。その要因は?
鍛治さん
- ある程度子どもの母語が確立した時点(小4〜6頃)で来日することでその後の親とのコミュニケーションがスムーズに行き、良好な親子関係が継続しやすい点にあると思われる。(中学生以降の来日は勉強が追いつかず、高校受験に間に合わない。小3以下で来日すると母語喪失かダブル・リミテッドになりがち)
- 枠を作る時に大阪はなぜうまくいったか?
→ 人権教育、同和教育の素地があった。教員が家庭にずかずか入り込んだ。
→ 民族講師や非常勤の母語話者講師が、枠校には最低1人いる。
樋口さん
- アメリカの本で、「下手な外国語を教える一方、移民の言語(能力)は軽視している」という趣旨の記述がある。
- 日本でも、外語大に、ブラジル人でもともとポルトガル語を話せるような人材がいない。
鍛冶さん
- ダイバーシティ。労働力足りないから外国人でも受け入れるか、とかではなく、ダイバーシティこそが社会を活性化させるという見地に立って、社会の多様性を保証するために、どうか力を貸してほしいということで外国人を受け入れる視点が必要なのでは。
宇都宮大の元学長
- 上位校ではなかったことが、特別枠をつくるに至った要因の1つ。ルーツのある子をどう支えるかという視点から。
- ブラジル学校からも2人、今年入ってきた。