北京からバンクーバーへ向かう途上では、朝日が沈んでいく。
飛行機が太陽から遠ざかるように飛ぶためだ。
飛行機に乗る時はだいたい通路側を指定するが(頻尿でよくトイレに行きたくなるのでそのほうが安心)、今回だけは外の景色が見えたほうが良いのではないかと思って、窓側にした。
そのおかげで感傷に浸りながら朝日の沈んでいくさまを眺められた。
しかしながら、トイレにいく時にはかなりタイミングを見計らって行く羽目にはなってしまった。頻尿恐るべし。
幸い、隣の席の人たちはカナダ人とおぼしき気の良い夫婦で、いつでも気軽に席を立ってくれた。
しばらく眠って、また目を覚ますと、再び外は夜が明けていた。
地球と太陽と飛行機がどういう関係にあるのかもはやよく分からないけれど、とにかく外は明るくなっている。
席の目の前に設置されている画面をいじって地図を見ると、アラスカからカナダの辺りを飛んでいるらしいことが分かった。
CAさんに指示されて閉めっぱなしだったブラインドを少し開けてこそこそ写真を撮ってまた閉めたりしていると、隣のおじさん(夫婦の夫さん)が「へい、もうちょい開けといてや」らしきことを言った。
そして外を眺めるなり「めっちゃ綺麗やん」とデジカメを取り出し、バシバシ写真を撮り始めた。
機内の雰囲気を見ると、もうブラインドを開けっ放しにしても良さそうだったのでそうしていると、おじさんは僕越しにずっと外を眺め続けていた。太陽には全く興味を示さなかった彼も、雪を冠した山の姿は相当気に入ったらしい。
たしかに、初めは雲かと思ったが、ほんとうは山のてっぺんに積もった雪とその上にそっとかぶさる雲だった。
しかし、隣のおじさんがあまりにずっと僕越しに外を眺めているものだから、邪魔しないように気をつけなくては・・と緊張。
そのあたり、トイレにいく時に気を遣うところも含めて、僕はやっぱり日本人だなと思う。しつこいようだが、良し悪しではなく・・。
ちなみに、隣のおじさんがお連れ合いに「(ぺらぺらぺらぺら)・・ロッキー(ぺらぺらぺらぺら)」としゃべっていたので、これがロッキー山脈の一部なんだろうなということが分かった。
そうこうしていると空港に着いたので、入国審査の順番待ちの列に加わった。
何気なく電光掲示板に目をやると、手話の映像が流されている。
右下の部分を拡大。
つい最近まで知らなかったが、生まれつきの「ろう者」(耳の聞こえない人)は、文字を読むことも難しい人がいるということである。日本でろう者支援団体のボランティアをしていたときに教えてもらった。
空港の掲示板が多言語表記であることは当然だが、まさか手話の映像まで使って言語的マイノリティ(識字の困難なろう者)に配慮しているとは。
カナダ、恐るべし。
そして、日本の空港では見かけない、移民審査窓口が。
移民をまともに受け入れる政策を取っている国では、空港もこういう仕組みになるのだ。日本も近い将来、こうなるのか。あるいは、今のように実習生やら日系人やらという枠組みを使った中途半端な政策をとり続けるのか。
「移民を受け入れると日本は混乱する」と言われて久しいが、既に移民政策をとって社会インフラに反映させ続けている国に倣えば、ひょっとしてそれほど混乱など起こらないのではないか。
カナダびいきに聞こえるかもしれないが、しかしやはりカナダは多様性を歓迎する(マイノリティの存在を重んじる)空気に満ちている。
2017年度「世界幸福度ランキング」で7位に食い込むこの国と、経済的には世界一でも移民・難民の排除が進む隣国アメリカ(幸福度14位)と。
さて日本がもし政策的に重要な判断を下すことになったとき、仮にこの2つの国を参考にするとしたら、果たしてどちらの政策をより重視していくとよいだろうか。
ちなみに、日本は2017年度、幸福度ランキング51位とのことである。
(参照:http://www.huffingtonpost.jp/2017/03/21/world-happiness_n_15505470.html)