初訪問 〈世界の療育室から〉カナダ・バンクーバーで作業療法ボランティア

カナダではどのような小児療育が行われているのか?

その現場を見るため、知人の紹介を受けて、バンクーバーの東部に位置するバーナビーの小児療育施設(Little Buddies Pediatric Therapy)を訪ねました。

 

 

療育の内容

1時間の療育について、以下の説明書きが掲示されていました。

・45-50分 クライアントと療育者による直接療育

・5-10分 今日の療育に関する保護者との話し合い

・5-10分 療育者によるカルテ作成

 

また、施設のWebサイトには、「作業療法」について以下のように説明されています。

作業療法(Occupational Therapy)は、作業を通じて日々の生活に関わることを可能にする科学です。

作業とは、人々が日々の生活の中でやることのすべてを指します。作業は私たちに意味と目的を与え、私たちの健康と幸福のために不可欠です。

作業療法士は、障害のある人や怪我をしている人にとって、重要なことをする能力が影響を受けた場合に生じる障壁を克服するのに役立ちます。

子どもは大人のように、生活の中で多くの作業と役割を持っています。それには、家族、友人、恋人、生徒でとしての役割が含まれます。

子どもの主な仕事は「遊び」であるため、当施設では、遊びを用いて関係を築きます。

 

  • セルフケア:食事、着替え、トイレ、睡眠、衛生に関すること。
  • 生産:描画などを含む、参加して楽しむ学校や保育園での活動。
  • レジャー:仲間との遊びや社会的交流、スポーツへの参加、趣味や興味、課外活動。
  • 社会的関与:家族や仲間との関わり、社会的スキルの育成。

ある子どもたちが自然に到達する発達の段階に、同じスキルを身につけるために追加の支援が必要な子どももいます。

作業療法士は、子どもに最適な課題や環境を設定する訓練を積んでおり、各課題を子どもが自分の力で成功させる力の習得を促します。

また、子ども各自の個別の学習ニーズに合った教材を作成し、養育者や他の専門家(例:音声言語病理学者、教室の教師、行動コンサルタント)と協力して、すべての環境で子どもの成功を促します。

当施設では、一人ひとりの子どもたちの多様な学習ニーズを尊重します。

 

私たちは、

・一人ひとりの子どもの強みと課題を判断するためにアセスメントをします。

・家族や他の専門家と協力して有意義で現実的な目標を設定し、子どもにとって有効な施策を実施します。

・そして両親や他の専門家が家庭、学校、地域社会での施策を実施する能力を高めます。

 

引用(翻訳は筆者):

http://littlebuddiespeds.ca/about_us/what-is-occupational-therapy-ot/

 

施設の内部は、充実した作りになっています。

 

プレイルーム。

 

 

そして、奥の部屋は「ジム」になっています。

 

 

 

1日ボランティア

この日は特別に、朝10時〜夕方5時まで、1日ボランティアをさせていただきました。

 

土曜日だったこともあり、セラピストの方いわく「今日はかなり忙しい日」とのことで、ひっきりなしにクライアントの親子が訪れていました。

1時間に2組ほどの子どもが8コマほど来ていたので、15人〜20人の子どもたちが来たかと思います。

 

来ている子どもたちは、自閉スペクトラム症、いわゆる発達に凸凹のある子どもたちだと思われます。(施設長の方が病欠だったため詳しい説明は聞けませんでしたが・・)

 

 

あるセラピーの内容

ある小学校高学年くらいの男の子とセラピストの方の遊びです。

下の写真の正方形の板を釣ったブランコ(不安定)の上で、10のタスクをこなす!というゲーム。

 

タスクの内容は、男の子とセラピストが1つこなすごとにその場で思いついたものを増やしていきます。

初めは3つくらいでしたが、最終的には10個にまで膨らみました。

 

 

  1. 仰向けに寝る
  2. 膝立ち
  3. 立つ
  4. 片足立ち10秒
  5. つま先を10秒触る(両手で両足の)
  6. 端の青い部分に10秒立つ
  7. 一回転
  8. 片足立ちでつま先を触る15秒
  9. 片足立ちで一回転
  10. 片足立ちでロープの上部を触って10秒

 

私も参戦させてもらいましたが、タスク7あたりから急にハードになります。笑

タスクを増やしてはチャレンジするターンを、男の子とセラピストが交互に繰り返していきました。ひと通り終えるのに30分以上かかったと思います。

 

 

また、OsmoというiPadを使ったゲームをしていた子どももいました。

 

(Osmoのサイトより)

 

子どもが描いた絵がカメラで読み込まれて、そのままiPad内のモンスターの手によって動き出します。

自分の描いた絵が画面内で動き出すというのは、大人でもやってみたいはず。もちろん子どもはもう夢中でした。

この施設でも最近導入し始めたようでした。

 

セラピストの姿勢

セラピストの人たちは2〜3人が常時いらっしゃいました。

その人たちに共通する姿勢はこの3つです。

「ダメ」「危ない」を言わない(そもそも危険は極力除去されている)

子どもが何をしたいか問いかけ、引き出す

やたらと褒める(Awesome! を連発)

 

そして、施設としては、子どもの喜びそうな仕掛けが随所にあり、

 

(ジムの電気を消すと、上の方で木が光り輝きます)

 

 

また保護者には、一つひとつの遊び(遊具)の意味が丁寧に説明されていました。

 

 

 

まとめ

このカナダの施設に来るまでに、日本でもそれほどたくさんの療育施設を見てきたわけではないので、比較できないのは残念です。

しかし、ここカナダでも子どもと丁寧に向き合う人たちが日夜努力を重ねていることは実感できました。

 

また、上の方でご紹介した「Osmo」というiPadと連携するICT教材

こういうものを積極的に取り入れようとする姿勢は見習うものがあるように思います。

 

そして、この施設の遊具・玩具の充実度を見ても、かなり充実した補助金が給付されているだろうことはうかがえました。

お金が全てではないとは言え、予算が充実していれば十分な数の優秀なスタッフを雇い、ICT教材を始めとした道具も整えられる。それが子どもたちの健康と福祉をより向上させ、引いては社会全体の幸せに繋がるのではないでしょうか。

 

 

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