概要
- 日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない。
- 職員が管理職に昇任するための資格要件として日本の国籍を有することを定めた東京都の措置は,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない。
判示事項
1 地方公共団体が日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることと労働基準法3条,憲法14条1項
2 東京都が管理職に昇任するための資格要件として日本の国籍を有することを定めた措置が労働基準法3条,憲法14条1項に違反しないとされた事例
裁判要旨
1 地方公共団体が,公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない。
2 東京都が管理職に昇任すれば公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員に就任することがあることを当然の前提として任用管理を行う管理職の任用制度を設けていたなど判示の事情の下では,職員が管理職に昇任するための資格要件として日本の国籍を有することを定めた東京都の措置は,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない。
理由
(2) 地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するな どの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に 関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)については,次のように解するのが相当である。すな わち,公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の権利義務や法的地位の内容 を定め,あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど,住民の生活に直接間接 に重大なかかわりを有するものである。それゆえ,国民主権の原理に基づき,国及 び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が 最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし, 原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定 されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその 国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。
【要旨1】普 通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である 職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的 な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するもので あり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法14条1項にも違反するものでは ないと解するのが相当である。そして,この理は,前記の特別永住者についても異なるものではない。
参照法条
憲法14条1項, 労働基準法3条, 労働基準法112条, 地方公務員法(平成10年法律第112号による改正前のもの)58条3項, 地方公務員法13条, 地方公務員法17条, 地方公務員法19条
裁判所サイト
要旨: http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52248
全文: http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/248/052248_hanrei.pdf
ウィキペディア(Wikipedia)
東京都管理職選考試験事件
『2019年版出る順行政書士 合格基本書』
p.14 憲法 3〈人権〉人権の享有主体