「外国人受入れと日本の未来」-在留外国人基本法に向けて- 外国人材の受入れに関する円卓会議 公開シンポジウム@衆議院議員会館

 

「外国人受入れと日本の未来」-在留外国人基本法に向けて- 外国人材の受入れに関する円卓会議 公開シンポジウムが、2019年3月26日に衆議院議員会館で開催された。

 

以下、行われた議論の書き起こし記事。

 

 

毛受敏浩さん(日本国際交流センター執行理事)基調講演「外国人とともに創る日本の未来ビジョン」および「在留外国人基本法の提言」

ダブルリミテッド、未就学の海外にルーツをもつ子どもたちのことにも言及された。

 

山下貴司 法務大臣 スピーチ

「省庁横断で今までにない規模の施策が講じられることになる」

 

「国際的にも外国人材は競争的になってきている」

 

「多文化でありながら共に生きていける、多文化共生社会を」

 

 

「企業は外国人受入れと定着にどう取り組むか?」パネルディスカッション①

実哲也(日本経済研究センター研究主幹)

アンジェロ・イシ(武蔵大教授)

杉崎重光(ゴールドマンサックス副会長)

杉村美紀(上智大学副学長)

成川哲夫(日本曹達取締役)

舟久保利明(東京工業団体連合会会長)

 

 

アンジェロ・イシ(武蔵大教授)

「私は日系ブラジル人3世であるのは客観的事実だが、自分のアイデンティティをふまえて在日ブラジル人1世と自らを呼ぶことにしている」

 

「今までの構造的な問題は、責任のなすり付け合いになっている点。大企業のCSRを我々はもっともっと厳しく問うて行かねばならない」

 

「日本社会は、労働者に求める日本語の能力が高すぎる。アメリカでは、ブロークンな英語でも就く仕事がある」

 

「翻訳通訳の質保障とそれにかける予算の問題。外国人労働者の自己責任や、日本語学習の努力に頼るだけではいけない。恐ろしいくらい通訳・翻訳がデタラメのことも」

 

杉崎重光(ゴールドマンサックス副会長)

「これからは、外国人を選ぶ日本ではなく、外国人に選ばれる日本になっていかねばならない」

 

「日本は周辺アジア諸国と比べて成長率は高くない。転職の自由など、多様な価値観、働き方を整備しなければ」

 

「GS社では人事評価基準はグローバルに統一されている。途中入社は当たり前。ヘッドも途中入社。」

 

杉村美紀(上智大学副学長)

「マレーシアでは、トランスナショナルプログラムを政府が奨励。結果、アフリカや中東から高度人材が入ってくる。同じことが韓国や中国、タイ、ベトナムでも行われている。そうした動きを、頭脳流出ではなく、人材還流と呼んでいる。」

 

「より自分の力を活かし、生きやすい場を求めて人が動いていく時代。」

 

「教育の機会均等だけでなく、結果の平等も必要との議論。公正性。」

 

成川哲夫(日本曹達取締役)

「雇用者数増加の2割以上を外国人が占めている。しかし、日本は受け入れ国として必ずしも優位性を保てるものではない。戦略的受入れ体制整備の必要性。」

 

「技能実習制度は安価な労働量として外国人を使ってきてしまった。これを改める必要がある。」

 

「日本人と同等以上の待遇をできる企業のみが受け入れをできるということにすべきだと考える。 家族帯同を望めば十分扶養できるだけの賃金を支払うべきである」「高度人材の受入れは現状でも自由のはず。にもかかわらず、なぜ進まないか。日本は働きたい国に関する調査で下位に低迷。高度人材のみを受け入れることは不可能」

 

舟久保利明(東京工業団体連合会会長)

「”中間人材”」

 

「研修生の名目は技術移転。ならば中小ではなく大企業に行ったらいいだろうと思うが。それでも、中小で受け入れた人の中から、3,000人規模の企業の社長になった者もいた。学びに飢えている者たち」

 

「企業の中には、労働者として安ければ良いとだろういう考えでやっているように見えるところも。なんであんな非道なことするんだろうと」

 

「外国人も日本人も、企業が同じように見るべきだろう」

 

 

「5年現場にいれば言葉の問題は現場レベルでは解決する。それでも5年で帰国し、再入国を認めないのは…。」

 

「今のようにピンハネがまかり通っている現状ではなかなか難しい」

 

 

ディスカッション

アンジェロ・イシ(武蔵大教授)

「特定1号が家族帯同を認めていない点は見直すべき。家族帯同のメリットにも目を向けるべき。家族と同居していた方が生産性の向上が見込まれる」

 

杉崎重光(ゴールドマンサックス副会長)

「日本の労働市場に流動性を。」

 

「ビザの仕組みをもっと柔軟に。配偶者がワークビザを取りにくい。」

 

「子どもたちの公立学校での教育機会の充実を。ワシントンでは現地校で日本の子が手厚く指導してもらえていた。そういったインフラを日本にも」

 

杉村美紀(上智大学副学長)

「SDGsでは、機会の平等を指すequality ではなく、equity やinclusion、あるいはglobal citizen という言葉が使われている」

 

「機会の平等だけではなく、結果の平等。日本の教育では外国人は来る者拒まず、といったかたちになっている」

 

「留学生も、employability を重視している」

 

舟久保利明(東京工業団体連合会会長)

「石の上にも3年と言わず、5年10年20年と経験を積み、工場長や役員になってもらいたいと思っている」

 

「中小企業としては、家族帯同は当たり前、国に帰ることを考えずに骨をうずめるつもりというような人に来てもらいたい」

 

「地域社会は外国人受入れと定着にどう取り組むか」パネルディスカッション②

大野博人(朝日新聞編集委員)

井手修身(NPOイデア九州・アジア理事長)

小川賢太郎(ゼンショー社長兼会長/国民生活産業・消費者団体連合会会長)

清水聖義(群馬県太田市長)

鈴木江理子(国士舘大学教授)

田中宝紀(NPO YSCグローバル・スクール責任者)

 

大野博人(朝日新聞編集委員)

「いま日本は、単に働き手が足りないだけでなく、人が、国民が足りない。どうやって受け入れていくかが問題」

 

井手修身(NPOイデア九州・アジア理事長)

「地方にどうやって人材を呼び込むか。リクルートで『さらば東京』という地方創生にかかる取り組みをしたが、結果として『やっぱり東京、いちどは東京』という流れは止まっていない」

 

「いわゆる出稼ぎ労働者として来日した外国人が、年間で50万円もの収入格差のある地域に留まるかと言えば、それはやはり東京へ行くだろうと。特区を使うなどの施策をさまざま施行すべきだろう」

 

小川賢太郎(ゼンショー社長兼会長/国民生活産業・消費者団体連合会)

「何考えてんの?家族来てもらわないと困るだろう、と。ナンセンス。」

 

清水聖義(群馬県太田市長)

「人口22万で、工業出荷額は全国11位。小さな町で大きな力を出している。メイドインジャパンと言いながら、メイドインチャイナといいますか、中国の人たちが多く働いている」

 

「外国人に対して賃金が安いというのは、私は聞いたことがない」

 

「教育がいちばん大事。かれらが国の財産として残ってほしいと思っている」

 

「中卒後の進学率は、普通公立高校55%、フレックス制の高校19%、私立高校20%。問題はその後の大学。」

 

鈴木江理子(国士舘大学教授)

「あらゆる法や制度が日本国民を前提に作られてきた。義務教育の対象を広げなければ外国人の子どもの不就学はなくならない。」

 

「アファーマティブアクションを外国人に導入するべきではと思う」

 

田中宝紀(NPO YSCグローバル・スクール責任者)

「外国人の子どもたちは『ここにいるはずなのに、いない』ということが続いてきた。ボランティア任せになったりして、結果として教育機会の格差が拡大してしまった。」

 

「質が担保された日本語教育機会の保障を、学校の中だけでなく、その外でも」

 

 

ディスカッション

清水聖義(群馬県太田市長)

「いまの田中さんの話は悲観的すぎますよね(笑)。外国人児童生徒の不登校率は2%くらいにとどまっているのであって。」

 

小川賢太郎(ゼンショーCEO/生団連会長)

「グループ全体で9,000人の外国人を使っていて、その7割は外国人。」

 

「日本語学校を地方に作ってくださいよ、と言っている。スタンフォードとシリコンバレーのミニチュア版ではないが」

 

田中宝紀(YSCグローバル・スクール責任者)

「悲観的な意見を述べるかもしれませんが(笑)、できる地域とできない地域の格差に振り回される子どもたちがいる現状は変えなければ。発達の重要な時期を逃すことになってしまう。縦割りの弊害を超える仕組みを作らなければ」

 

「その意味で、外国人庁のように、統合的に施策を行える仕組みができるのは重要」

 

「日本がモデルにする韓国の多文化共生施策を見ても、これから施策を考えようとする日本は、縦割りの弊害を超えるようなことが実現できるはずと言われている」

 

大野博人(朝日新聞編集委員)

「太田市のようなところに住めたからラッキー、ではなく、どこに住んでもラッキーという仕組みを作らなければ、ということですね」

 

井手修身(NPOイデア九州・アジア理事長)

「浜松のグローバル人財センターのようなプラットフォームが全国にあればいいと思う」

 

清水聖義(群馬県太田市長)

「極端なこと言うと、出稼ぎで帰ってしまう人は多文化共生に含めなくていいんじゃないかなと思うんですよね。自治体は定住する人たちにこそ全力投球するべきだと思うんですよね。労働者の人たちのことは企業がやるべきだと」

 

鈴木江理子(国士舘大学教授)

「かつて外国人問題と語られていたところ、ようやく外国人の担い手とか貢献というふうに語られるようになってきたのは大きい動き」

 

田中宝紀(NPO YSCグローバル・スクール責任者)

「意識をアップデートしていくべき。外国人だろうと日本人だろうと、あらゆる社会資源を今後共有していくことになる。新しいものを創り出すことも大事だけれど、今あるものをアップデートしていくことが重要だろうと思う」

 

「違いを尊重することも大事ですが、違わないことに目を向けて繋がれるということを大事にしていけたら」

 

「多文化共生の具体的なイメージをまだ誰も描けていない。メディア含め社会のリーダーが夢と希望に溢れる共生のビジョンを語ってほしい」